ソフトウェアの品質を学びまくる2.0

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2013年に読んで面白かった本 - その3

 マンガでその1その2をやりましたが、その3で終わりです。マンガ以外読んでなさすぎだろ・・・。

小説編

 いろいろ読みましたが、やっぱりSFが好きみたいです。

天涯の砦

 近未来の宇宙開発時代を舞台にした、ソリッドシチュエーションもの。
 ぼくにとってのSFの醍醐味は二つあって、一つはファーストコンタクトものなどで発揮される、知的生命体への想像力。もう一つが、物理的環境が少し異なる環境で起こる現象への想像力です。
 『天涯の砦』は後者。母体から切り離されてしまった宇宙建設物の中でかろうじて死なずにすんだ数名が、生き延びるために苦闘する話。
 いまいち、どの人物に感情移入していいかわからないという欠点はあるのですが、人間を一瞬で死に至らしめる敵・真空の恐ろしさや、無重量状態での予想外の現象が克明に描かれており、息をつかせません。
天涯の砦

天涯の砦

 

まだ見ぬ冬の悲しみも

 山本弘さんの小説は、好きなものとそうでないものに分かれてしまうのですが、短篇集『まだ見ぬ冬の悲しみも』は、前半がよいです。
 最初の一遍『奥歯のスイッチを入れろ』は、上述の「物理的環境が少し異なる環境で起こる現象」の典型で、「人間の400倍の速度で活動できるロボット」が戦う話。ストーリー性はほとんどないんだけど、「時の流れの遅い世界」での戦闘の描写が本当に面白い。
 高速で動けるというのは、相対的には時間の流れを遅くしているということ。そういう能力を持つのは、たとえば『仮面ライダーカブト』クロックアップ能力者や、『SPEC』のニノマエですね。ですが、この短編を読むと、この能力は思ったよりも色々な制約があることがわかります。
 まず、逆説的に、「それほど速く動けない」。動こうとした瞬間に、移動速度に応じた膨大な空気抵抗に合うから。
 また、能力者同士ではまともな会話が望めない。音速も1/400に感じられるので、1秒に1メートルくらいしか音波が到達しないし、高速の感覚では波長も400倍分異なるので、補正の必要がある。
 こういった数々の「事実」に、感心してしまうこと請け合いです。
 あと、ニノマエの、「ほぼ時間停止」という超高速に比べて、400倍という設定は、「数分待つと銃弾も到達する」という速度になり、これまたいいんですよね。
まだ見ぬ冬の悲しみも (ハヤカワSFシリーズ―Jコレクション)

まだ見ぬ冬の悲しみも (ハヤカワSFシリーズ―Jコレクション)

 

光圀伝

 これは眠れなくなるほど面白いです。
光圀伝

光圀伝

 

  『天地明察』も面白かったんだけど、また違う切り口の面白さ。よくもまあ、水戸光圀にまつわる史実とエピソードをこんな風にまとめあげ、また「義とは何か」という一本の線にそって最初から最後まで仕立てたものだと。信じがたい力量だと思います。

 あと、この小説は男が読むとまず間違いなく、左近を好きになりますよね。キャラを捏造しすぎだと思うけど、許す、完全に許す。
天地明察

天地明察

 

盤上の夜

 こっちの記事でも言及しました。ボードゲームしばりで、こんなに面白い話が書けるものかー。
盤上の夜 (創元SF文庫)

盤上の夜 (創元SF文庫)

 

ノンフィクション編

 ジャンルに統一感がないですが、学問の一般向け啓蒙書は好きですね。全然仕事に活かしていません。
 なお、ビジネス書はだいたい(ぼくにとって)ハズレなので、まったくランクインしないです。でも無駄に読んじゃいますね。

栗先生超弦理論入門

 秋山浩一さんのブクログレビューを読んで、読んでみました。
 大学時代はエセな物理屋さんだったので、量子力学とか相対論とかは学んでいますが、これらはまだ、具体的だった。なんというか、現実の延長にある話だった。
 でも弦の理論ってもう、数学的操作にしか見えない。筆者がわかりやすさのために捨象しているのかも知れないんだけど、時には単純な加減乗除で世界の次元数を求めてしまったり・・・。
 というのは本書の欠点ではなく、数学と物理の強烈さというのを痛感させてくれるんですよね。自然科学、すごい。物理はやっぱりとても魅力的な学問だと思いますが、天才がやるものという気もしますね。。。
大栗先生の超弦理論入門 (ブルーバックス)

大栗先生の超弦理論入門 (ブルーバックス)

 

統計学が最強の学問である

 いろいろ話題になりました。
 一般向け統計学の読み物って、「統計から導かれる意外な事実」みたいなトリビア集になってしまうものが多いんだけど、本書は、まさに今統計学が流行っている理由の部分に寄り添ってて、面白いし読みやすい。
 これをもっと、読み物的でなく、数式で記述した実務的な内容のテキストを出していただけると、もっと嬉しい。
統計学が最強の学問である

統計学が最強の学問である

 

死の淵を見た男

 原発の是非を問う作品ではありません。福島第一原発とその周りにいた人間たちが、311の地震直後で何を見て、何をしてきたかの記録。
 たった数時間のうちに、日本の運命を左右するような決断を迫られ、何度も絶望させられながらも戦っていく姿に、胸が締め付けられる。

 一番恐ろしいのは、非常用ディーゼル発電機が水没で止まった時の描写。
 電気が止まった時に起こること。揺れでも爆発音でもなく、悲鳴や怒号でもない。制御盤のランプ、警報音などが、不規則に、数十秒かけてパタパタ消えていく・・・。この乾いた、無機質な光景にゾッとしました・・・。

死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発の五〇〇日

死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発の五〇〇日

 

日本人に贈る聖書ものがたり

 歴史を学ぶうえで一番の障壁になるのって、登場人物のキャラが立ってないってことですよね・・・。人間としてのイメージが立ち上がってこない。だからつまらない。
 そのとき助けになるのが、フィクションです。もちろんフィクションにすることで、事実に基づかない勝手なエピソードや、作者が強調したい部分にバイアスをかけられたキャラ設定を受け入れざるを得ないというトレードオフはあるのですが、それを考えても、フィクションから得る歴史への親近感というのは価値があると思います。緋村抜刀斎も実在の人物だと思いますし。
 宗教も同じです。正直、旧約聖書を素で読むのはきつい。かといってエヴァを観ると、正典の前に死海文書レビューしてしまいそうです。なので、原作からの逸脱の範囲の小さい物語を読むといいですよね。たとえば、阿刀田高の『旧約聖書を知っていますか』。
旧約聖書を知っていますか (新潮文庫)

旧約聖書を知っていますか (新潮文庫)

 

  『日本人に贈る聖書ものがたり』も良書で、アブラハムの時代から、聖書の流れに沿いつつも、物語風に説明する。それが登場人物の人格をたちあげてくれる。また、聖書とは関係ない話を随所に織り込んでいき、飽きさせない語り口がよいです。

ソフトウェア/システム開発関係

 よく考えたら、以下の2冊についてはお気に入りの本としてレビューも書いたのでしたー。。。ので追記。(2014/1/9)

間違いだらけの設計レビュー

 コチラに記事を書きましたー。

kzsuzuki.hatenablog.com

 とりあえずスモールスタートってことで、この本で学んだ「シナリオ」の考え方を、レビュー外でのチェックで試しているところです。でも読みながらどんどん新しい観点が出てきてしまって、どれを落とすかが迷いどころ。

なぜ重大な問題を見逃すのか? 間違いだらけの設計レビュー

なぜ重大な問題を見逃すのか? 間違いだらけの設計レビュー

 

トンデモ“IT契約"に騙されるな

 コチラに記事を書きましたー。

kzsuzuki.hatenablog.com

トンデモ“IT契約

トンデモ“IT契約"に騙されるな

 

  今また類書(?)である『なぜ、システム開発は必ずモメるのか?』という本を読んでいます。これまた嫌なタイトルですねえ。

なぜ、システム開発は必ずモメるのか?  49のトラブルから学ぶプロジェクト管理術

なぜ、システム開発は必ずモメるのか? 49のトラブルから学ぶプロジェクト管理術

 

 おわり

 あっ、マンガ以外だともう終わってしまった!
 これは、ぼくがマンガばかり読んでいるということではなく、マンガ以外で面白いと思える作品が少なかった、めぐり合わせが悪かったのだと信じています。
 来年もたくさんマンガを読もうと思っていますので、オススメあれば教えてくださいね。
 「ソフトウェアの品質を学びまくる」というタイトルで、ソフトウェアの品質にまったく言及しない本の紹介ばかりで、本当にダメ人間って感じがする、美しい年の瀬です。